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ソクたま会議室
2019.02.03
2020.08.22
テーマ: どうして勉強させなきゃいけないの?

学歴が重要視されない国でそれでも勉強をする意味とは

森下拓道

森下 拓道(JICA)

「学校の勉強が社会に出てから役に立つの?」そんな子どもからの質問に言葉を詰まらせたことはありませんか? 当たり前だと思っている教育や勉強がなかったら子どもたちの考える力、生きていく力、未来はどうなるのでしょう。開発途上国で教育支援を行ってきたJICAの森下拓道さんの話から見えてくる“生きること”と“学ぶこと”の関係とは?

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学校教育が当たり前ではない国で

―これまでにセネガルやブルキナファソなど西アフリカに駐在してきた森下さん。現地に学校を作ったり、子どもに読み書き教えたりコミュニティが学校を支援するプロジェクトなどを実施してきました。

私たちが支援を行う前から、子どもたちは“生きるための計算”をすることはできたんです。例えば、町で物売りをしている子どもたちにとっては、いくらもらったら、いくら返すということが生きるための計算です。

しかし、彼らは、単位がお金以外になると途端に計算ができなくなります。つまり、生活に困らないように数を数えられても、自分のスキルとして“計算”を生活に役立てたり、活用したりということができなかったのです。

感覚として分かっていること、経験で覚えたことを“自分のもの(知識・能力)”として応用していくというのは難しいことなのだと実感しました。そして、改めて学校で学ぶということがいかに大切なのかと感じました。

日本の勉強は社会生活で生きるもの

―生活につながる勉強。かつて文部省で日本の教育にも携わっていた森下さんは、それは途上国に限ったことではないのではないかと話します。

日本の教育でも同じく生活を豊かにする知識を学んでいるのではないでしょうか。「学校の勉強が社会に出てから役に立つの?」という声はよく聞きますが、例えば、炊飯器や電子レンジなどの電化製品を使うときに、“電気はどこからきているのか”“こういう使い方をすれば壊れる”“電気がショートすれば動かなくなる”など、生活するうえで気にもとめていないようなことの背景には、学校で習う知識があると思います。

もちろん、それらの知識がなくても生きていくことはできるでしょう。しかし、社会で生きていくためには、ある程度の知識や能力を身につけておかないと人とのコミュニケーションがかみ合わなかったり、さまざまなシーンに対応できなかったり、社会の中で生きていくことが困難になるのではないかと思います。

ー一見、生活とは関係なさそうな勉強も見えないところで知識として役立っている。そう考えると学生時代に学んできたことは無駄ではなかったと子どもたちにも言えるかもしれません。

想像力を養い夢を育むのも勉強の役割

―また、読み書きする文化がない西アフリカの子どもたちを見て、改めて日本の教育で養われているある能力にも気づいたそうです。

私のいた地域は、口承文化が一般的で読み書きができない人も多いため、読書などを通して想像力を育む文化が育っていなかったのです。

だから、現地の子どもたちにとっては、目に見える範囲が世界のすべて。憧れの存在である村で一番イケてるお兄ちゃんやお姉ちゃんも、ずっと村にいて農業に従事していて、彼らと同じような未来が自分の将来のすべてだと思っているのではないでしょうか。

一方、日本では学校の勉強はもちろんのこと、乳児期から読み聞かせをしたり、絵本を読んだり、自分の生きている社会と違う空想の世界とをつなげていく力が自然と養われていると思います。

ー想像力があるからこそ世界で大きな夢を描くことができるし、知識を応用して実現させようとする道筋も作っていくことができる。勉強をすることは、想像力を育てることであり、夢見る力を育てるための作業かもしれません。

何のために学校へ行かせるのか

―また、西アフリカでは、保護者世代も読み書きや計算を学ぶための学校へは通っていません。

統計では、学校に通う子どもの数が増えていっていますが、実態は、子どもたちは労働力とみなされているので、農繁期には家の手伝いをしなきゃいけない、兄弟の世話をしなきゃいけない、水汲みに行かなきゃいけないなどの事情で学校に通い続けられない子もいるのです。

また、学校に行っても先生がいない、教科書やノートがないなど勉強したことを身につけることができない子どもも少なくありません。

そして、日本と大きく違うのは、親御さんとしては、子どもたちにより良い生活をしてもらいたいから学校には行かせるけれど、学校に行ったからといってよりよい生活ができる保証はないということです。

日本をはじめ先進国では、子どもたちが納得するかどうかは別にして、就職や年収が勉強をさせるひとつの理由になります。

しかし、途上国では、勉強したからといって生活がどのくらい良くなるのかという想像ができないなかで、子どもたちの働く時間を勉強する時間に割くことは大きな決断だと思います。

それでも、子どもたちが学校に通うことを喜び、学習の成果が上がっているのを見ると大人たちも「子どもたちを学校に行かせなきゃいけない」といい方向へ意識が変わっていき、村全体で学校を支えようという動きが見て取れるようになります。

さらに、大人や地域の意識が変わっていくと子どもの学業にもいい影響を与え、教育が地域全体を活性化させていく様子も見てきました。

―学力が子ども人生を左右するものさしではない途上国。それでも勉強をさせるのは、子どもたちが知ること・学ぶことに喜びを感じているからです。子どもと勉強について考えたとき、まずは勉強するときの子どもの顔を見てみませんか。そして、勉強が社会生活で役立っていること、想像力が夢みる力を育てることを話して、学ぶことで得られる喜びを親子で探ってみてはいかがでしょうか?

※写真はイメージです

森下拓道

森下拓道

独立行政法人国際協力機構(JICA)人間開発部次長兼基礎教育グループ長。1994年に文部省へ入省し、2001年にJICAへ。2003~2007年にセネガル、2012~2016年にブルキナファソで教育支援に携わり、現在は、地域問わず基礎教育の関連事業を総括する立場にいる。 https://www.jica.go.jp/

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