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ソクラテスのたまご

「主体性ゼロ」の学生が前向きに変わるために一番大切なこと

授業には真面目に参加するけれど、主体的な学び方が身についていない学生たち。主体性の無さは何が原因なのかというと「どうせやってもできないと思っている」ことが大きく影響しているようです。

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主体性ゼロになる原因を考察する

「教育困難大学」に集まる主体性ゼロの学生達(http://toyokeizai.net/articles/-/188391)という記事が東洋経済ONLINEに掲載されていました。

いわゆる「教育困難大学」と言われる大学に来る学生は、真面目に授業にも出席するのですが、テストをすると意外なほど点数が取れない、レポートもコピペや内容が薄くなる。その原因は学生の生来の性格や能力にあることも否定できないが、大学進学までの学校生活で、そのような態度に仕込まれてしまった。要するに授業には真面目に参加するが、主体的な学び方が身についていない生徒たちだ。というものです。

 

一理はあるのですが、なぜ主体的な学び方が身につかなかったのか、なぜ主体的になろうとできないのか、を考えてみる必要があるでしょう。

私がある私立高校で高校3年生を対象にアンケート調査を行なったところ、進研模試の学習到達ゾーンで最下層にあたる「Dゾーン」の生徒達の多くは「勉強ができるようになりたい」という項目が高かったものの、「どうせやってもできないと思っている」という項目も併せて高いという結果になりました。

この結果から、彼らは決して不真面で後ろ向きではなく、むしろ、できるようになりたい、という内在的な希望もあるので授業に対しては前向きであると考えられます。ですから、先出の記事でもあったように授業には真面目に出席する理由にも繋がっていそうです。

 

では、主体性の無さは何が原因なのかというと「どうせやってもできないと思っている」という点が大きく起因しているという仮説を立てたいと思います。要するに自分に自信が無さ過ぎて、主体的に動くことに対してブレーキがかかってしまっているのではないか、と思うのです。

 

マズローの欲求5段階説

人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていて、低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲するとする説があります。これが絶対的な理論だという訳ではないですが、今回の件を説明する上では当てはまるのではないか、と思いますので紹介していきます。

 

低階層の欲求から紹介していきます。最も低次な第一階層は「生理的欲求」で、生きていくための基本的・本能的な欲求です。食べたい、飲みたい、寝たいなどが当たります。そもそも生命維持に関わるこうした欲求が欠乏していたら他の欲求は生まれにくいのは理解しやすいと思います。

第二階層は「安全欲求」で、危機を回避したい、安全・安心な生活を送りたいなどの欲求が生まれてきます。

第三階層は「社会的欲求」で、別名「帰属欲求」ともいい、集団に属することや仲間を求める欲求で、孤独感や社会的不安を感じることへの回避をしたいと思うようになります。

 

ここまでを総じて低次の欲求、これより上の階層は高次の欲求とし、内的な心を満たそうとする欲求が生まれていきます。

 

第四階層は「尊厳欲求」で、別名「承認欲求」ともいい、周囲から認められたい、尊敬されたい、欲求が生まれてくるようになります。ここで周囲から認められたことを実感し、心の欲求が満たされることでようやく自身が芽生えていくのではないでしょうか。

第五階層は「自己実現欲求」で、ここまでの欲求が満たされることで自己肯定感が生まれ、自分の能力を発揮して創造的で主体的な活動をしたいという欲求が生まれていくのです。

 

主体性ゼロの学生の心の欲求は、どの階層?

彼らは「どうせやってもできないと思っている」ので、まず少なくとも第四階層の欲求が欠如している状態であると考えられます。仲間やサークル活動、アルバイトなどを通じて第三階層の社会的欲求までは満たすことができたとしても、周囲から認められたいという欲求を学業については満たすことができない、と感じているのでしょう。

その中で、アルバイトなどでは周囲から尊敬されているという状況が起これば、自分の居場所はアルバイト先にある、ここでなら自分らしくいられる、もっと力を発揮したい、という高次の欲求が生まれてアルバイトへ余計にのめり込んでいくという構図も容易に想像できるのではないでしょうか。

 

まずは学業で達成感を与えよう

そうであれば、彼らにまずは学業で達成感を与える、感じさせるということを第一に考えていく必要があるでしょう。少しずつで良いから自分自身が成長していると感じられること、そしてできるようになったことを承認してもらえる仕組みづくりが重要です。

目の前の学生に対し、教育の質を担保していくためには、「これぐらいのことは知っているべき」というスタンスで高いハードルを要求するのではなく、一歩ずつ学び直しをしていきながら、確実にできるようになってきた、ということを認めてもらえるようにステップを細分化して成長を可視化してあげることが重要なのではないかと思います。

サボるのではなく、真面目に授業を受けてくれる彼らになら、そうした仕組みによって自己実現欲求を学業で見出してくれるようになる可能性を期待しても良いのではないでしょうか。

 

諸葛 正弥

諸葛 正弥

所属:諸葛正弥教育総合研究所株式会社 代表取締役/大手進学塾で長年指導を行ない、2007年に「イラスト図解でわかるプロ教師力アップ術55」(明治図書)を出版。教育委員会・各種学校などで教員研修を行ないながら、私立中高一貫校の学校改革などを手掛けています。 また、「ロボット教室」や「学習教室まなび-スタイル」の運営、「よい子を育む家」の監修なども行ない、教育について幅広く関わらせて頂いております。 http://www.t-skill.com/m-style/index.html http://www.jhb.or.jp/seminar-415

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