教育は未知にあふれている

ソクラテスのたまご

なぜ理系は敬遠されるようになったのか?理系離れを解消するための方策

現在も「理系離れ」は続いていますが、そもそもどうして理系は敬遠されるのでしょうか。さまざまな実態調査を元に考察し、理系離れを解決するにはどうすればよいのか考えていきたいと思います。

  • rss
  • bing

理系離れが進む現実

理系離れという言葉が盛んに取り上げられるようになってから、近年では自然科学系への進学率が若干回復しているものの、長いスパンで見れば減少傾向にあることに変わりはありません。私自身が大学受験をした頃にはすでに理系離れと言われており、大学受験での面接で「理系離れを解決するにはどうすれば良いか」という問いを投げ掛けられたことを今でも鮮明に覚えています。残念ながら当時の私にはろくな回答ができませんでしたが・・・。

 

しかし、現実に理系離れを解決するにはどうすれば良いのかという命題はなかなか難しい課題で、簡単に解決できるものではないというのも事実です。

 

教員の指導方法の違いによる影響

「平成22年度の小学校理科教育実態調査」(※1)によると、教職経験5年未満の教員で、理科の指導が「得意」「やや得意」と肯定的に回答しているのは49%にとどまっているというのが実情です。

子ども達に理科を好きになってもらう以前に教員もまた理科に対する苦手意識を持っているということは実は大きな課題であると感じています。

 

というのも、「自然科学を専攻した教員が中学生の理科の学力に与える影響について」(※2)という論文によれば、やはり自然科学を専攻した教員が指導した場合、生徒の理科の学力も向上したという結果が出ており、その要因についても指導方法に明確な差があったことも明らかになっているからです。

 

では、自然科学を専攻した教員の指導は何が違ったのか。それは「生徒が理科で学んだことを日常生活に結びつける指導」を行なっているという点にあります。

要は理科の学習を単なる試験勉強という枠の中で終わらせるのではなく、身近な日常生活に結びつける指導を行なった結果、生徒の科学的関心や興味が効果的に高められ、理科の学力向上、特に学力下位層の生徒の学力向上に寄与した可能性が考えられる、と結論付けられているのです。

 

小学校の理科も専科で指導する

小学校の教員の半数以上が理科の指導に対して苦手意識を持っているとするのなら、子ども達の理科への向学心を小学校の内に引き出し難くなっているという実情が浮かび上がっていくのではないでしょうか。

理科には実験もあり、準備や安全管理上の配慮が必要ですから、そうした専門性も考慮して理科こそ専科の教員が指導するという体制を作ることが重要な課題であるように感じます。

 

大学で理系は大変で文系は楽という時代は終わった

理系の大学に進学すると授業や課題で時間に追われ、バイトもやる時間がないとよく言われたものです。それに比べて文系なら自由な時間を作りやすいというイメージが先行しているということも理系進学が敬遠される理由の一つになっているかも知れません。

 

ですが、実は理系と文系で学習時間の差はそれほど大きな差はなくなっている(※3)ようです。

「授業に関連した学習」について比較をすると、理系の場合、平均6時間以上という学生が4割弱で、文系の場合は3割強という結果になり、理系の方がもちろん長いですが極端な差にはなっていません。

そして「授業に関連しない学習」については理系も文系も総じて低く6時間以上という生徒は理系も文系も2割程度という結果になりました。

 

同様に大学生の1週間のアルバイトの時間を比較すると、6時間以上というケースで見ると理系が4割程度、文系が6割弱となり、差があることは否めませんが、サークルの時間で見れば理系と文系には大きな差は見られず、むしろ芸術や家政などの学生において0時間という割合が6割を超えるという結果が出ています。(なお理系の0時間の割合は5割弱)

そのようにみると、理系はアルバイトという面では授業や研究の拘束も厳しくシフトに入りづらいという点などで若干の差はあったものの、学習時間やサークル活動という点では理系は大変だというほどの差は無くなっているのかも知れません。

 

ですから、先行した理系は辛いというイメージで敬遠するのはとても勿体ないと感じます。

 

理科が好きになるのはどんな人か

昆虫が好き、星に詳しい、など理科が好きで知識も豊富、というケースを見ると、総じて好きなジャンルに対するオタクのようになっているのではないかと思います。好きだからこそこだわって学習しているとも言えますが、そもそも「こだわることができる」という力、すなわち「こだわり力」がその源なのかも知れません。

 

ですから、幼児の頃に興味関心を抱いたヒーローなどのキャラクターがあったなら、とことんまで「こだわらせてみる」という教育的なアプローチも理科好きを育てる上での原動力となる「こだわり力」を伸ばす方策なのだろうと思います。

 

※1: 国立研究開発法人科学技術振興機構,2012

※2:独立行政法人経済産業研究所,井上敦,田中隆一,2017

※3:平成20年2月28日 中央教育審議会大学分科会制度・教育部会及び学士課程教育の在り方に関する小委員会合同会議 金子元久委員発表資料より

 

諸葛 正弥

諸葛 正弥

所属:諸葛正弥教育総合研究所株式会社 代表取締役/大手進学塾で長年指導を行ない、2007年に「イラスト図解でわかるプロ教師力アップ術55」(明治図書)を出版。教育委員会・各種学校などで教員研修を行ないながら、私立中高一貫校の学校改革などを手掛けています。 また、「ロボット教室」や「学習教室まなび-スタイル」の運営、「よい子を育む家」の監修なども行ない、教育について幅広く関わらせて頂いております。 http://www.t-skill.com/m-style/index.html http://www.jhb.or.jp/seminar-415

\ SNSでシェアしよう /

  • rss
  • bing
  • この記事が気に入ったら
    いいね!しよう

    最新情報をお届けします

  • コメント
0

コメントを書く

  • この記事に表示可能なコメントはありません。