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2019.03.05

カナダ在住の講師が伝える英語の発音がきれいでなくてもいい理由

2020年度の新学習指導要領により、小学生で英語学習が始まるなど、日本の英語教育の低年齢化が進んでいます。早期英語学習のメリットとして、発音がきれいになるというのが言われていますが、はたしてきれいに発音することがそれほど重要であり、世界に通用する英語力とは、発音によるものなのでしょうか。そこで、カナダ在住の日本語講師である筆者が日本人と発音について解説します。

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日本人は発音のキレイさにこだわり過ぎ?

2020年度からの新学習指導要領により、小学5年生から英語が教科化、小学3・4年生では外国語活動が開始されます。「使える英語」を身につけるため、文法中心だった日本の英語教育が大きく転換します。そこで、この「使える英語」という点を「使える英語」とはきれいに発音することだと思ってしまう保護者の方が非常に多いのです。

YouTubeなどの動画サイトには、芸能人や著名人が英語を話しているシーンが多くアップされています。そのコメント欄には「英語をうまく話しているように見えるけど発音はね…」「文法はいいんだけど、日本人発音だな」といったように発音についてのコメントが多く見られます。

英会話スクールの広告にも「ネイティブのような発音を」といったうたい文句が多いです。もちろん、英語をネイティブスピーカーのように話すことができればそれに越したことはありません。しかし、目指すべきはそこではありません。

発音よりも気にすべきは話の内容

カフェで隣に外国人が座ったとします。Aさんは声だけ聞いているとまるで日本人と思うかのごとく発音が素晴らしいです。

ただし、話の内容がつまらない。

一方、Bさんは発音は今ひとつですが、話がおもしろい。あなたなら、AさんとBさんとどちらと話を続けたいでしょうか。

発音がいくらネイティブスピーカーのように素晴らしくても、人が重きをおくのは結局のところ内容です。まったく話が通じないレベルの発音や文法なら問題ですが、日本人の不得意とするLとRやTHとSのミスぐらい、ネイティブスピーカーならほとんどの場合わかってくれます。

私の住んでいるトロントの野球チームである「トロントブルージェイズ」には、数年前まで川﨑宗則選手が所属していました。彼の英語力は高いとはいえません。しかし、連日のように現地メディアが彼のことを取り上げるのです。それは話が面白いからです。アナウンサーも「なんて言ったの?」なんて言いながらがんばって、彼の話を聞こうとするのです。内容さえ興味深ければ人は聞こうとしてくれるという好例です。

あえて日本語的アクセントで英語のスピーチをする大学教授

私がまだ大学生だったときのことです。日本語教育界ではかなり有名な教授の授業を幸運にも受けることができました。その教授の専門は発音なのにもかかわらず、英語でのスピーチはかなり日本語的アクセントです。私はそれを、ずっと疑問に思っていました。そしてその疑問はある日の授業で解決しました。

「ネイティブスピーカーに近い発音はできますが、あえて日本語アクセントにしているんです。そうすればみんなしっかりと耳を傾けてくれますから。」これが教授のポリシーでした。

極端な例ですが、滑らかすぎる英語だと聞く側にさらっと聞き流されてしまう。だからあえて日本語的な英語アクセントにして注意を引いているというのです。

現在、私の住んでいるカナダは移民国家です。世界中から来た人がそれぞれの母語のアクセントのある英語でコミュニケーションをとっています。アクセントそれ自体もその人の個性だと捉えられています。

小さいころから発音の勉強に時間を割いて努力すれば、よく日本人が言うような「きれいな英語」と言われる発音は身に付けることができるでしょう。ただし、それにはかなりの時間と労力が必要です

したがって、発音の向上に注力するよりも、さまざまな体験をしたり、本を読んだり、芸術に触れたりすることで、中身のある話をできるようにする方が、聞いてもらえる英語になると思います。

外国に出るとさまざまなアクセントの英語を話す人がいます。英語をきれいに発音できることは素晴らしいことですが、それをゴールにするよりも、話す内容の充実をめざす方が大切ではないでしょうか。

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西川華

教育・受験指導専門家の西村創が主宰する「西村教育研究チーム」のメンバー。外国語学部日本語学科卒。中学と高校の国語免許を持つ塾講師、日本語講師として海外で15年以上の指導経験を持つ。一番得意とするのは成績が上がりにくいとされる受験国語の指導で日本トップクラスの高校への多数の合格実績あり。また、日本語講師とのしてのキャリアを生かし、日本語力が不十分な海外帰国生徒の指導も得意とする。現在はカナダ在住。翻訳家としても活躍中。一児の母。

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