教育は未知にあふれている

ソクラテスのたまご

2019.02.18

【コグトレ➀】認知機能を高めて学力やコミュ力アップへ

学ぶ気持ちはあるのに結果が出なかったり、友達関係がうまくいってなさそうだったり。わが子に不器用さを感じることはありませんか? それは、認知機能が弱いからかもしれません。今回から紹介するコグトレは、認知機能を強化していくトレーニングです。第1回目となる今回は、認知機能のチェック法やコグトレでできることを紹介します。

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わが子に感じる“ズレ”は認知機能の弱さが原因!?

今や何冊もの本が発売されている「コグトレ」ですが、誕生したきっかけは、児童精神医・医学博士の宮口幸治さんが、簡単な図形の模写や短い文章の復唱すらできない非行少年たちと出会ったことでした。「みる力」「きく力」「みえないものを想像する力」が弱く、これまで勉強や日常生活の中で苦労し、挫折してきた彼らの認知機能を何とかしたいと約5年をかけて開発されたそうです。

 

そもそも認知機能とは、「記憶」「言語理解」「注意」「知覚」「推論・判断」などの要素が含まれた知的機能のことです。人間は、五感(みる、きく、触れる、味わう、匂う)を通し得た情報を、頭の中で整理し、計画を立てて実行し、結果につなげていきますが、この過程を行うために必要な能力こそが認知機能になのです。

 

しかし、例えば、認知機能が弱くて「整理する」段階で間違えてしまうと、その後の過程をいくらがんばっても結果はゆがんでしまいますよね。 「いくら練習しても字をキレイに書けない」「やる気はあるのに周りと同じようにできない」という子は、認知機能の弱さが原因なのかもしれないのです。

 

そして、認知機能の影響は、学習だけにとどまりません。日常生活のなかで他人と接するときでも、認知機能が弱く、得た情報を間違えて処理してしまうと「自分のことをばかにしている」と怒りをためてしまったり、みんなと同じように作業ができずに自信をなくしたりと生活しづらくなっていきます。友達に対して攻撃的だったり、間が悪かったり、卑屈になってしまう子も、性格の問題ではないのかもしれないのです。

 

 

1クラスの約5人が認知機能が弱い可能性あり

話を学習へ戻しましょう。学校の授業では、情報を一時的に記憶保持する「ワーキングメモリ」という力も必要になります。

 

例えば、授業内容を聞き取りながら覚え、覚えながら次の話を聞き取るには「聴覚(言語性)ワーキングメモリ」が必要ですし、黒板をノートに書き写すためには、黒板の内容を覚える「視覚性の記憶」、黒板とノートで見る大きさや角度が違っても同じだと認識できる「形の恒常性」、どこまで書き、次はどこから書くかなどの「視空間ワーキングメモリ」などが必要です。「ワーキングメモリ」が弱いとうっかりミスが増え、集中力が持続しません

 

しかし、ワーキングメモリや認知機能が弱いからといって必ずしも日常生活が送れないわけではないですし、もちろん見た目では分かりません。

 

知的能力を心理発達テストで評価したときIQ70までが知的障害、IQ70~84がグレーゾーンとされていますが、知的障害とグレーゾーンの子どもを合わせると子ども全体の1割5分(約15%)程度になるともいわれています。35人クラスであれば、成績が下位の5人が当てはまります。

 

すでに、ここまでの話で「もしかしたら、うちの子も?」と感じた読者もいるかもしれません。そこで、次は、家庭でできる認知機能のチェック法を紹介します。

 

 

わが子の認知機能をチェックしてみよう

「コグトレ みる・きく・想像するための認知機能強化トレーニング (プリントして使えるCD付き)」宮口幸治(三輪書店)では、簡易的に認知機能を評価できる「みる力」「きく力」のスクリーニング検査を紹介しています。

 

みる力

下記の立方体、ハチの巣を模写します。8~9歳くらいまでに描けるかが認知機能の発達度合の目安です。

 

 

立方体は、奥行きがつかめないと立体図ではなく四角形が集まっているように見えます。また、ハチの巣は、六角形が集まっていることと各辺を共有していることが理解できなければ写すのが難しくなります。

 

 

 

上の図は、実際の図をもとに編集部で再現した認知機能が弱い場合の例です。➀は奥行きがつかめないケース、②は立方体にはみえているもののうまく描けないケースです。③は丸が集まっているだけで④は六角形は分かっていますが各辺が共有されていません。

 

きく力

1秒間隔でランダムに数字を読み上げ、子どもに順番通り復唱させます。6~7歳くらいまでが5桁、9~10歳までが6桁を復唱できるのかが目安です。数字を逆から復唱させる“逆唱”であれば、8~9歳なら4桁が言えれば問題ありません。

 

また、数字ではなく単語でも構いません。イヌ、船、月、リンゴなど関連性のない単語を1秒間隔でいくつか読み上げて同じ順番で正確に復唱できるかをみます。9歳までなら4語、それ以上なら5語を言えれば問題ありません。

 

専門的な検査は、ほかにも多数あります。今回紹介している簡易検査だけでなく、もっと詳しくわが子の認知機能について知りたいときは、医療機関や子ども家庭センター、教育センターなどへの相談をおすすめします。

 

 

認知機能はトレーニングで変わっていく

また、認知機能が弱い可能性があると思っても気に病む必要はありません。先ほどのスクリーニング検査で「もしかして…」と感じた人へ、次回の記事からは「コグトレ」のトレーニング方法の一部を紹介していきます。

 

コグトレは、幼児の早期教育にも効果が期待されるので未就学児の兄弟と一緒に行ってもいいし、特別な器具や勉強が必要なわけではなく家庭でも気軽に行えます。高齢者の認知症予防などにも利用できると考えられているため、おじいちゃんやおばあちゃんとゲーム感覚で行い、家族間コミュニケーションに役立ててみてはいかがでしょうか。

 

※記事内のスクリーニング検査は「コグトレ みる・きく・想像するための認知機能強化トレーニング (プリントして使えるCD付き)」宮口幸治(三輪書店から出版社の許可を得て引用させていただきました

 

 

 

宮口幸治

監修/宮口 幸治

立命館大学産業社会学部・大学院人間科学研究科教授。少年院矯正教育から学校教育等へ応用した効果的な支援法について教育・心理・福祉・医療の観点で行う「コグトレ研究会」(http://www.cogot.net/)を主宰。著書が多数あるほか、全国で研修なども行っている。医学博士、子どものこころ専門医、日本精神神経学会専門医、臨床心理士、公認心理師。

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