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2022.12.19

「雑談が苦手」発達障害のある人がうまく乗り切る7つの対策

みんなは当たり前にできている雑談が、なぜできないんだろう…。学生時代、職場、ママ友づきあいなど、10代のガールズトークにはじまり、特に女性はあらゆる場面で雑談力が求められます。そこで、たわいのない会話が苦手でもうまく乗り切る方法を心理カウンセラーの神田裕子さんがアドバイスします。

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記事を執筆したのは…

神田裕子さん認定心理士、産業カウンセラー

認定心理士、産業カウンセラー。嫁姑問題、発達障害、カサンドラ症候群などの家庭問題を中心にこれまでに3万件以上の相談に答えてきたカウンセラー。雑誌のコメンテーターとしてしても活躍するほか、心理カウンセラー養成スクールを開講し、カウンセラーの育成も行っている。

発達障害だと雑談が苦手と感じる理由

そもそも、雑談とは何でしょう?

『〔精選版〕日本国語大辞典』によると”さまざまな内容のことを気楽に話すこと。とりとめのない話”とあります。

しかし、とりとめのない話とは難しいものです。「自分のことを話すと自慢話に受け取られそう」「何を話してよいのかわからない」「気楽になんて話せない」と、悩んでしまう人も多いことでしょう。

特に発達障害がある場合、その特性も相まって雑談が苦手だったり、できなかったりすることもあります。

ASDの人が雑談を苦手とする理由

ASDは人見知りをする人が多く、初対面では寡黙になりがちです。「話す」という行為は頭の中の思考を言葉にすることなので、何をどうすればよいのか分からなくなり真っ白になってしまうようです。

一方で興味のある話題には積極的に参加、夢中になりすぎて我を忘れてしまうこともあります。

背景には、こだわりの強さと、空気を読むことや暗黙の了解、行間をとらえることが苦手という特性が挙げられます。興味関心のない話ばかりで相手がつまらなそうにしていたり、帰りたくてソワソワしている様子にも気がつきません。

また、相手の年齢や社会的地位によって言葉遣いや話題を使い分けることが苦手な場合もあり、無礼と思われてしまって雑談が成立しないこともあります。

ADHDの人が雑談を苦手とする理由

ADHDがASDと明らかに異なる点は、気持ちに共感できるところです。人なつこいADHDはその場に抵抗なく入っていけるし、話題も豊富。ただ思いつくままに言葉を発するため、話の内容が散漫になりがちです。

雑談だから“とりとめのない”話でよいのですが、自分でも「あれ?何を話していた?」とわからなくなることが多々あります。周りは話の展開に追いつけず、ひとりで終着点がないまま話し続けてしまうこともあるでしょう。後で「(一人浮いた状態を)またやってしまった」と気づきますが、衝動性が強いため話を途中で止めることが難しいのです。

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【雑談対策①】相手と自分に興味をもつ

では、雑談力をつけるにはどのようなコツがあるのでしょう。まずは雑談をする上で意識しておくといい2つのポイントを紹介します。

【ポイント①】相手に興味を持つ(観察する)

一緒に雑談する人の容貌や身だしなみのみならず顔色、声のトーン、話すスピード、持ち物などに注意を払いましょう。知り合いであれば趣味や休日の過ごし方など、共通のテーマに発展しそうなことに常日頃からアンテナを張りましょう。

【ポイント②】話している自分を意識する

ASDの人はアイコンタクトが苦手です。相手のおでこやあごなど、顔の一部を見る習慣をつけましょう。ADHDの人は、「どの話から会話が始まったか」を頭のどこかに置いておくようにします。

雑談は言葉だけで成り立つものではありません。パラランゲージ(周辺言語)と呼ばれる視線、服装などの印象、スピードや沈黙なども関係します。

また、方言もパラランゲージのひとつです。周りから親しみを持たれやすいことを活かして方言を雑談のきっかけにしている人もいます。

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【雑談対策②】話題を準備しておく

銀座のママは出勤前にいくつかの新聞と雑誌に必ず目を通します。どのような客にも対応できるよう話のネタを準備するのです。特定の相手と話す場合は、仕事内容や業界、年代に合わせた”旬のネタ”を用意しましょう。決まっていない場合は、天気や料理の話題から入るのもよいです。

雑談・導入の話題例

  • 昨夜は寒かったので鍋料理を食べたのですが、美味しくて食べ過ぎました
  • 急に寒く(暑く)なってきたね。今度のお正月(夏休み等)は帰省するの?
  • 同級生が遊びに来るのだけれど、この辺りで中華料理の美味しいお店ないかな。

ただし注意が必要なのは、話題をふるタイミングです。今まで違う話をしていたのに唐突に脈絡のない話をすると相手は戸惑います。自分から話をふる直前に話していた内容を踏まえるようにしましょう。

例えば、先ほど例文の1個目に挙げた「昨夜は寒かったので鍋料理を食べたのですが、美味しくて食べ過ぎました」という話題であれば、「寒い」「鍋料理」「美味しい料理」「食べ過ぎ」など、フレーズに登場しているキーワードに関連させた会話をするようにしましょう。

また、アドリブに弱かったり、話しかけられるとパニック状態になりやすい人は、話題の“下ごしらえ”をするほかに、話の展開をいくつかイメージしておくことも安心できる要素となります。

【雑談対策③】あいづちで感情表現をする

会話の中であいづちは、相手の話を促すアクセントになりますよね。どんなあいづちをうてばいいのか悩む場合は、下記のような「あ行」と「は行」で打つことをオススメしています。

あ行のあいづち例

  • あぁ
  • いいね、いいえ
  • うん
  • えっ?
  • おぉ

は行のあいづち例

  • はぁ
  • ひぃぃ~
  • ふぅん
  • へぇ
  • ほほぅ

上記は比較的、感情表現ができるあいづちです。感情表現が苦手な人は、表情よりも上記のような言葉でバリエーションをつけてみてください。

また、ADHDの人は話題がいろんな方向へ話がいってしまいそうであれば、数字を使うとよいでしょう。「最近、興味を持ったものが3つあります」「今年は2ヵ所へ旅行しました」と。そしてこっそり1つ目、2つ目…と指折りしておくと忘れずに済みます。

雑談力は話すことばかりではありません。ネタに困ったら聴き手に変身するとよいのです。その際に効果的なマジックワードとして、「具体的に」があります。「最近どう?」よりも「最近、具体的に仕事はどうですか?」と尋ねる方が、相手は話しやすくなります。

【雑談対策④】会話は「受容+質問」と心得る

「会話(言葉)のキャッチボール」というフレーズがありますが、雑談も基本的に「受容(受け入れる)と質問」という仕組みで、ボールを投げ合うように続けるものです。

キャッチボールは、自分が取りたいボールだけをキャッチしていては成り立ちません。どんなボールが飛んできても、なるべくキャッチしようとすることで続いていきます。会話も同じです。興味を持てない話や意見が異なっていても、「なるほど」「そうなんですね」と、否定せずに受け止める(受容する)ことが必要です。

特にADHDの人は、思いつくままに話をしてしまいがちなので、受容することを意識してみてください。

また、キャッチボールで受け取ったボールを相手に投げ返すように、会話では相手へ質問をすることで、会話は続いていきます。

ASDの人は自分のことや興味があることだけにフォーカスしがちですが、質問に留意した会話を心がけましょう。

【雑談対策⑤】質問力を身につける

いくら、受容+質問といわれても、何を質問すればいいか分からないという人もいますよね。

質問にはいくつかのパターンがあります。

例えば、相手が「YES・NO」で答えるような質問の仕方(クローズド・クエスチョン)は、相手の意思を確認する際には有効ですが、雑談の場合は会話が続きにくく、すぐに終わってしまいます。

また、ビジネス場などでは有効な「5W3H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どんな手段で、いくらで、いくつ)」の質問は、話の詳細を整理して把握することができますが、雑談においては詳細を質問され続けると嫌な気分になることがあります。

もし使うのであれば「How」を活用しましょう。例えば「それってどうやってやったの?」「本当はどうしたかったの?」など、相手から嫌がられない程度に会話を深められます。

雑談とはいえ、表面ばかりを取り繕っていると話がとぎれます。質問をして返ってきた回答に「それはつらかったね」「がんばったんだね」「楽しみだね」などのねぎらいや励ましの言葉も適度に織り交ぜると気持ちよく会話が続きやすくなりますよ。

【雑談対策⑥】ほめ言葉はつぶやく

ほめることが苦手なASDは、「ほめ言葉はひとりごとのようにつぶやく」「事実を淡々と言葉にする」と心得ましょう。面と向かってほめるとお世辞にとられかねない言葉でも、さりげなく伝えることができます。

一方、ADHDは自己卑下することで相手を持ち上げるところがあります。「私は〇〇が下手ですが、あなたはそれができてすごいですね」というほめ方は自己中心的な評価になります。「あなたのここがすごい」とシンプルに伝えましょう。

また、「さすが」というフレーズが目上の人に対しては失礼にあたる、というように社会マナーが必要な関係性の相手には、「すてき」「すごい」「すばらしい」という3つの”す”を使うと無難です。

【雑談対策⑦】引き際の言葉を用意しておく

気まずい雰囲気に耐えられなくなったら、その場を離れてもよいでしょう。実際、電車の時間に間に合わないなどの理由で途中退席することもあるので、適当な理由をつけて離れてしまっても大丈夫です。

ただし、その際には理由だけを伝えて突然立ち去るのではなく、相手の気持ちを考えたひとことを添えましょう。

「もっと〇〇さんの話を聴きたいところですが…」「今日は、お話しできてとても楽しかったです。また今度続きを聴かせてください」と言えば、「失礼な人!」という印象は抱かれにくいはずです。

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雑談が好きな人ばかりではない

誰もが雑談好きというわけではありません。沈黙を好む人、特定のことにしか興味のない人、時間が足りないといつも急いでいる人など多種多様です。

どんな人ともドギマギせず楽しく雑談することなど、そうそうできることではありません。意外とみんなトライ&エラーを繰り返しているものです。

今回の記事ではいろいろな方法をアドバイスしましたが、無理し過ぎるとかえって空回りして妙な雰囲気になってしまうこともあります。気負い過ぎずにあなたなりのやり方で大丈夫ですよ。

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神田裕子

認定心理士、産業カウンセラー。嫁姑問題、発達障害、カサンドラ症候群などの家庭問題を中心にこれまでに3万件以上の相談に答えてきたカウンセラー。雑誌のコメンテーターとしてしても活躍するほか、心理カウンセラー養成スクールを開講し、カウンセラーの育成も行っている。

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