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2022.08.31

【カサンドラ症候群】6つの相談窓口、治し方とは【家族問題の専門家が解説】

毎日の「つらい」「なんで?」が心に積もっていき追い詰められていくカサンドラ症候群。ですが、あなたの中に溜まった澱(おり)は、誰かに離すことで吐き出すことができるかもしれません。カサンドラ症候群に悩むあなたの話を聞き、力になりたいと思っている相談窓口を家族問題の専門家である新井寛規さんが紹介します。

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記事を執筆したのは…

新井寛規さん

小規模フリースクール「ろぐはうす」センター長。小学校教員、児童養護施設児童指導員、学童保育士、市家庭相談員を経て、2018年大阪府に学習生活支援センターろぐはうすを設立。現在、大学教育学部非常勤教員、保育士・教員養成専門学校の教員、保育士国家試験予備校非常勤講師、市府県放課後支援員研修講師、市府県子育て支援員研修講師、保育教育児童福祉コンサルティング、啓発活動を行っているほか、「境界に生きるー。」(UTSUWA出版)などの著書も手掛けている。

カサンドラ症候群になる理由

カサンドラ症候群はパートナーや配偶者、職場の上司部下など、身近な関係にある人がアスペルガー症候群(AS)や自閉症スペクトラム(ASD)であることに起因しています。

特性上、コミュニケーションに問題が生じて人間関係に支障が出るのですが、その関係性は家族や夫婦に限りません。

上司部下の場合も、直属の上司になってはじめて違和感に気付き、独自の仕事の仕方について行けずに部下が疲弊していってしまうことがあるでしょう。

また、夫婦の場合、結婚前の交際段階から何らかの違和感はあるものの、発達障害であることはわからないまま結婚し、結婚後の出産や子育て等のきっかけから判明するパターンがあります。

カサンドラ症候群に陥ってしまうような関係性の場合、精神医学や心理学によほど精通していない限り、自力での問題解決はかなり難しいケースがほとんどです。中には、夫婦や親子など、当事者同士のみで乗り越えるケースもありますが、かなりの時間と労力がかかることを覚悟しなければなりません。

カサンドラ症候群をセルフチェック|症状や対処法を専門家が解説
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カサンドラ症候群に陥ってしまう理由

カサンドラ症候群のつらさは、真の意味では当事者しか分かりません。カサンドラ症候群だからツラいのではなく、ツラいからカサンドラ症候群になったのです。では、なぜこんなにもツラく悲しいのでしょうか。置かれている環境や日常を振り返れば、ツラいと感じてしまうことが「考えすぎ」や「心の弱さ」ではないことが分かるはずです。

【理由】気持ちが分かってもらえない

人はコミュニケーションを取る際、大きく分けて下記の2種類の方法をとります。

  • バーバル・コミュニケーション(言語コミュニケーション)
  • ノンバーバル・コミュニケーション(非言語コミュニケーション)

アスペルガー症候群(AS)や自閉症スペクトラム(ASD)の場合、この「ノンバーバル・コミュニケーション(非言語コミュニケーション)」の理解が難しい人がいます。

特に日本人は非言語コミュニケーションをとても大事にしている国民性があり、非言語コミュニケーションを多用しながら生活をしています。言語コミュニケーションのみでしか関わることができない環境は、相当なストレスを生むと考えられます。

【理由②】感覚の共有ができない(心が通じ合えないと思ってしまう)

「だいたいでいいからやっておいて」「塩を適量入れて下さい」などの抽象的な指示を受けた場合、アスペルガー症候群(AS)や自閉症スペクトラム(ASD)の方はどのように動けばよいのかが判断できず困ることもあります。

また、「多めに頼んでおいて」「少なめに盛り付けて」などの指示も「多めとは、何個のことだろう?」「少なめとは?」となり、把握が難しいでしょう。多すぎたり少なすぎたり、トラブルが生じることも少なくありません。

特に夫婦生活は、このような「感覚の共有」や「合致」が大切となります。共有や合致ができないのではなく、特性として全く異なるため、心が通じ合えない訳ではありません。ですが、「分かってもらえない」「分かろうとしてくれない」と思ってしまうのも、無理はないでしょう。

【理由③】こだわりが止まらない

よく聞く例としては、服の肌感や色へのこだわりなどです。「○○する時は××」「△△を置く場所は□□」など、自分の中でルールが決まっている人も多くいます。

それが変化すると、パニックを起こすことや、自己防衛的行動として身近な家族(妻子など)を攻撃してしまう場合もあります。

もし、上司が攻撃をするタイプの場合、モラハラに発展することもあるでしょう。さらに、当の本人は次の日には忘れていることも多いので余計に苦しくなるのです。

【理由④】ヘトヘトになるまで振り回されて疲れ切ってしまう

仕事や趣味など、没頭するときとしていないときの差が非常に激しい特性の人もいます。

よくいえば「完璧主義」。常に全力投球ですが、一方で手の抜き方がわからず、ミスが許せず自分を責める、他者に責任転嫁をしてしまうことがあります。

物事に集中しすぎてしまう(過集中)ことで、一度集中のスイッチが入ると時間の経過を忘れ、気づくと今度はスイッチが切れたように疲れ切ってそのまま寝てしまうケースもあります。

周囲や家族はその差に振り回されてしまい、疲れ切ってしまうことも珍しくありません。

カサンドラ症候群に悩む女性

カサンドラ症候群は真面目な人こそ苦しい

発達障害は脳の疾患であると分かっています。風邪などと違い、先天的なものなので、診断を受けたからと言ってすぐに治せるものではありません。薬もありますが、国内においては数種類に限られており、効力の判断は非常に難しいといわれています。

そのことで苦しいのは発達障害の本人だけではありません。周囲の人間も苦しいという声が多いのです。

特に、カサンドラ症候群は真面目な人や、優しすぎる人、献身的な人に多く見られると感じます。相手が障害を抱えているからこそ、寄り添い切れない自分が悪いのではないか、冷たいのではないかと自分を責める方もいます。

しかし、発達障害とは簡単に治るものではく、ましてや周囲の人間のせいではありません。もっと根本的な問題です。誰が悪いと考えるのではなく、割り切る必要があります。

ただし、「割り切る」「受け入れる」ということは、「つらくてもガマンをするしかない」ということではありません。相手は変わらなくても、つらさを変えていける方法を考えていきましょう。

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カサンドラ症候群から抜け出す方法

上記の通り、発達障害は簡単に治療が完了する疾患ではありません。本人含め、周囲の身近な人(家族)も付き合っていきましょう。

【方法①】カウンセリングで孤独から抜け出す

カサンドラ症候群は当人たちにしか分からない困りが多く、周囲の理解がなかなか得られないこともしばしばです。「どうせわかってもらえない」と思えば思うほど、孤独感は強くなり、孤独感は心の乾きを促進していくでしょう。

きちんとした資格のあるカウンセラーであれば、カサンドラ症候群を理解しています。「わかってくれる人」がいるだけでも、気の持ちは違います。まずは気軽にカウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか。

【方法②】続けられるルールをつくる

ルールを作るポイントは、無理のない範囲で継続することが可能な内容にすることです。

例えば、「大変なときも察して手伝ってくれるようなことはない」という場合、前述の通り、「察する」という非言語コミュニケーションを期待するのではなく、相手は無理のない範囲で継続できる手伝いをルーティーンにしてみてください。うまくいくケースもあります。

最初はゴミ出しや犬の散歩などの小さなことからがよいでしょう。掃除の場合、広い範囲をお願いするのはハードルが高いため、「自分の机の上だけはきれいにする」など、相手が把握できる範囲方少しずつ初めてください。

職場の場合、部下が上司の仕事の進め方を決めることはできませんよね。なので「課長の思いやこだわりを大事にしたいために、朝礼後の15分は今日やる仕事を共有しませんか?」「私自身の勉強のために、部長のスケジュールを教えていただけませんか」とクッション言葉をおいて聞いてみましょう。

【方法③】体の不調があるなら医療機関へ

精神科医師の中には、「ストレスが体調に現れているということは、問題がかなり進行してしまっている証拠だ。しかし、残念ながらそういう自覚を持たない患者は非常に多い」と話す人がいます。

つまり、体調に不調をきたしてしまった場合は、医療機関への受診を迷わずオススメします。

ストレスに起因した疾患は山のようにあります。そして、治療は長く尾をひくものも多いのです。体調の変化は、危機感をもって考えましょう。

【方法④】物理的な距離を置く

ストレスの原因と物理的に距離を置くことは早期対応であるほど効果的です。また、もし実際に距離を置くことが難しくても、最終的に離婚や退職(転職)もあると考えておくだけで精神的に少し楽になることもあります。

離婚や転職は珍しいことではありません。どちらも簡単にできることではありませんので準備が必要です。離職も視野に入れている場合は、社内の産業カウンセラーや上長には、先に話されておいた方がいいかもしれませんね。

カサンドラ症候群で病むイメージ

カサンドラ症候群の5つの相談窓口

体の不調がある場合は、医療機関に相談しますが、その前の悩んでいる時点でも相談できる場所があります。

【相談窓口①】女性(相談)センター

女性センターは、女性のあらゆる相談を受け付けている施設であり、都道府県や地域の公的機関が設置しています。

女性の生活をサポートすることが目的のため、DV、ハラスメント、夫婦問題、ストーカー、家庭関係など、女性が抱える問題全般の情報提供、相談、研究などを実施しています。

各地域によって施設の名称は異なりますので、『都道府県名 女性相談センター』で検索してみてくださいね。

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【相談窓口②】児童相談所

もしカサンドラ症候群に悩んでいる家族で子どもがいる場合は、児童相談所に相談することも可能です。

「児童相談所=児童虐待の窓口」のイメージが強いかもしれませんが、子ども関係全般の相談を受け付けています。

カサンドラ症候群の直接の窓口ではありませんが、夫婦間のカサンドラ症候群で子どもへの影響が心配な場合、親子間でカサンドラ症候群に陥っている場合、相談してみてはいかがでしょうか。

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【相談窓口③】弁護士相談

別居・離婚・離職など、法的な観点からのトラブル対応には弁護士が頼りになります。相談料が気になる場合は、まずは、市区町村が実施している無料弁護士相談や、「法テラス」を利用してみてはいかがでしょうか。

【相談窓口④】発達障害支援センター

発達障害者の本人やその家族、関わる人々が相談できる発達障害者センター。全国各所に施設があり、相談に適した制度やサービスを紹介してくれたり、関わり方のアドバイスをもらったりすることができます。

【相談窓口⑤】よりそいホットライン

電話、FAX、チャットやSNSによる相談に対応している「よりそいホットライン」。社会的包摂サポートセンターが運営しており、暮らしの悩みや女性の悩みなど、いろんな人のさまざまな悩みを24時間体制で受け付けています。

【相談窓口⑥】民間の相談サービス(カウンセリング)

有料にはなりますが、民間の相談サービスを使う手もあります。

ただし、サービスによっては自称・専門家もいます。必ずどんな人がどんな相談に対応しているのかを確認しましょう。

例えば、子育てに関する相談を受け付け「ソクたま相談室」では、大学教員や現役教員、保育士、相談員、医師、心理士など専門知識や資格、実績をもつ専門家が相談に対応しています。

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カサンドラ症候群は疾患ではないため、厳密な治療方法はありません。

しかし、カサンドラ症候群には、精神疾患や虐待、DV、家庭不和などの二次的障害に移行する高いリスクがあります。

「もしかしたらカサンドラ症候群かもしれない」と思なら、取り返しのつかないことになる前に誰かに相談しましょう。

「こんなことで人様に迷惑を…」と考える必要は一切ありません。きれいごとに感じるかもしれませんが、自分を大切にできない人は他人を大切にできません。あなたも誰かにとって大切な存在であることを忘れないでくださいね。

新井 寛規

小規模フリースクール「ろぐはうす」センター長。家庭教育師。小学校教員、児童養護施設児童指導員、学童保育士、市家庭相談員を経て、2018年大阪府に学習生活支援センターろぐはうすを設立。現在、大学教育学部非常勤教員、保育士・教員養成専門学校の教員、保育士国家試験予備校非常勤講師、市府県放課後支援員研修講師、市府県子育て支援員研修講師、保育教育児童福祉コンサルティング、啓発活動を行っているほか、「境界に生きるー。」(UTSUWA出版)などの著書も手掛けている。

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