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2021.12.03

40代以上が陥るミッドライフクライシス|憂鬱、無気力の乗り越え方【チェックリスト付き】

「なんとなく憂鬱、不安」という思いに襲われることはありませんか?特に理由は思い当らないのに、落ち込んだり、やる気が起きないのは、40~60代の多くの男女が陥りがちな「ミッドライフクライシス」といわれる状態なのかもしれません。大人の思春期のようなこの状態をどうすれば乗り越えられるのか、公認心理師の吉田純一さんが解説します。

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記事を執筆したのは…

吉田純一さん

公認心理士。36年間の中学校教員を経て、現在は教育現場で児童生徒、保護者、教職員のカウンセリングを行っている。今まで受けた相談件数は500件以上。

中年を襲うミッドライフクライシスとは

アメリカの発達心理学者であるエリクソンは、人生を下記の8つの発達段階に分け、それぞれに克服すべき課題と、それがなしえなかった場合に危機があることを指摘しました。危機が起こると、目標を見失い、活力がなくなり、次の発達段階に正しく移行できなくなります。

エリクソンの発達8段階

  • 乳児期:~1歳6ヵ月
  • 幼児期:~3歳
  • 遊技期:~5歳
  • 学童期:~12歳
  • 青年期:~18歳
  • 成人期:~40歳
  • 壮年期:~65歳
  • 老年期:65歳~

上記のように、40~65歳頃までは壮年期とされています。そして、壮年期は、”子どもを育てあげること(世代性・生殖性)という課題”の達成を目指すとされています。

もし、課題の達成が果たせない場合、危機(クライシス)を迎えることになり、不安や憂鬱な気分に心が支配されてしまいます。このように壮年期に心身ともに不安定な状態になることをミッドライフクライシスといいます。

ただし、壮年期の”子どもを育てあげること(世代性・生殖性)という課題”とは単にわが子を育て上げることという意味ではありません。世代性と書いてあるように、これまでに自らが学び身につけてきたものを、後に続く世代に手渡していくとことだと考えます。

つまり、子育てだけではなく、家族や友人、仕事、地域社会といったさまざまな場面において、加齢に伴うホルモンバランスの不調・体の衰えなどの変化に対応しながら、受け継ぐ側から受け渡す側へ役割を変えていくことが課題なのです。

ミッドライフクライシスは、上記のように役割が変化していく中で、過剰にストレスを抱え、心身の不健康な状況で起こると考えられます。

しかし、それだけではなく、目標を達成した後や絶頂期に突如に起きるケース(バーンアウトなど)もあり、ストレスを感じやすいからなるというものではありません。ミッドライフクライシスは、誰もが陥る可能性があるのです。

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症状からみる「ミッドライフクライシス」チェックリスト

では、自分がミッドライフクライシスなのか症状をみてみましょう。男女別に症状の一部を挙げてみました。当てはまるかチェックしてみましょう。

ただし、ミッドライフクライシスだと断定するものではありません。もし、1つでも当てはまればミッドライフクライシスだといえる可能性があると考える参考にしてください。

【女性用】ミッドライフクライシスの症状

女性向けのミッドライフクライシスの症状には次のようなものが考えられます。

女性に多いミッドライフクライシスの症状

  • 肩こり、関節痛、ほてり、疲労感などの身体的な不調がある
  • イライラしがちで怒りっぽくなった
  • 不安や心配事が増えるなど気分・精神面の変調を感じている
  • 無力感、諦め、目標の喪失などの抑うつ状態にある
  • 忘れ物、不注意による失敗が増えた
  • 家事がいつものようにできない
  • 対人関係や近所付き合いを避けるようになった
  • 夫や子どもに対して不信感がある
  • 夫や子どもに対しての期待外れ感がある
  • 夫や子どもが自分を理解していないことに腹が立つ
  • 不眠
  • 食欲減退
  • 引きこもり

女性の場合、ミッドライフクライシスに陥る時期が更年期とも重なるため、不調の原因がどちらかによるものなのか区別がつきにくいかもしれません。そもそも、ミッドライフクライシスと更年期は切り離して考える必要ははなく、更年期による体調の変化がクライシスを引き起こすきっかけになることもあります。

また、年齢による外見の変化に対しての焦りや子どもが離れていく(巣立っていく)ことへの寂しさがクライシスに繋がりやすいのも男性に比べて女性のほうが多いかもしれません。

【男性用】ミッドライフクライシスの症状

次に男性のミッドライフクライシスにはどのような症状が多いのでしょうか。

男性に多いミッドライフクライシスの症状

  • 仕事への遅刻や欠席が増えた
  • 仕事上のミスが増えた
  • 飲酒や喫煙、ギャンブルなど現実からの逃避行動が増えた
  • 無気力、無表情、無目標な抑うつ状態にある
  • 不機嫌、攻撃的な言動、怒声などパワハラ・モラハラ的な言動が増えた
  • 身だしなみが乱れ、不潔感や悪臭がある
  • 不適切な恋愛感情を抱き、セクハラなどを行う
  • 不眠
  • 食欲減退
  • 自殺したいと考える

男性の症状には、仕事上の変化や、生活面での行動変化など日常との違いが表れやすく、周囲が気付くケースが多いように思います。

本人に意欲や気持ちの低下の自覚がある場合は、早い時期にストレスの要因がどこにあるのかを把握し、環境改善するなどのケアを行うことが有効だと思います。

また、更年期というと女性をイメージするかもしれませんが、男性にも更年期があり、ミッドライフクライシスは、男性の更年期と重なります。男性と女性の更年期の違いは、男性の場合、顕著な体調変化を伴わないことが多いようです。食欲の減退や強度な倦怠感など、心身の変化を強く自覚する場合は、更年期の可能性も想定しておきましょう。

ちなみに、女性の更年期の場合は婦人科を受診しますが、男性の場合は決まった科があるわけではありません。症状に合わせた科を選んで受診をするようにしましょう。 例えば、前立腺に症状が出ている場合は泌尿器科、精神的な症状が強い場合は心療内科や精神科を受診してください。

うつ病などの精神疾患との違いは?

実は、ミッドライフクライシスとうつ病などの精神疾患との違いは、明確ではありません

ですが、もし、思考力や集中力の減退、感情鈍麻、不眠、食欲減退などの症状が、1日中見られ、それが2週間以上継続していると、うつ病の診断が下される可能性があります(DSM‐Ⅳ)。そのときは、まず心療内科や精神科を受診することおすすめまします。

精神疾患との違いをあげるとすれば、上記のようなさまざまな症状が本人の気質や成育歴などが要因になっているというよりも、年代に相応した家族的役割や責任、社会的役割や責任、仕事上の責務、年代からの健康上の不調など、年代的な要素から起こっていると推測できる点です。

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ミッドライフクライシスの8つの乗り越え方

ミッドライフクライシスの要因は、心を危機(クライシス)に陥れた要因にたどり着くことができれば、解決の糸口が見つかります。

また、リフレーミング(状況の捉え方を変えていくことで、ポジティブに解釈できるようにすること)を行うなどして、危機を乗り越えることができるとも考えられます。

具体的には、下記のような方法を試してみてください。

【乗り越え方①】クライシスの要因を考えてみる

ミッドライフクライシスは、年代(年齢)的な要素が深く関係しているため、要因を探るためにモチベーショングラフなどを作成して、自分の人生を一度俯瞰してみることが有効だと考えられます。

モチベーショングラフとは、横軸に時間軸、縦軸にモチベーションの高低軸を取り、ライフイベント毎のモチベーションの点数を曲線グラフとして描いたもの。ライフイベントごとの当時の気持ちや思考を振り返えることで、自身の特性など、自己分析に役立ちます。

自分自身のクセを知ることで、なぜ自分がミッドライフクライシスに陥っているのか要因を見つけやすくなります。

【乗り越え方②】クライシスの症状を整理する

心身にどのような症状があり、その症状がいつ頃から起きているのかを客観的に把握するために紙に書き出してみましょう。

また、症状を自覚したとき、何に対してストレスを感じていたのかも併せて書いておくことで、現状の状態に陥った要因や、現状から抜け出す見通しを見つけ出せる可能性があります。

【乗り越え方③】過去のライフスタイルを思い返す

ミッドライフクライシスに陥る年代は、日々の生活や仕事、家事、育児に奮闘するあまり、自分自身を振り返る時間や余裕がない人が多いように感じます。一度、下記のようなことを考え、これまでの人生を振り返ってみましょう。  

   

  • 子どものころの夢は実現していますか?
  • 若い頃に抱いていた理想と、現実は、違いましたか?
  • これからの目標は定まっていますか?

これからの人生を見つめ直すことや、新たな個人としての目標を見つけるヒントが見つかるかもしれません。

【乗り越え方④】運動や趣味、習いごとなどの時間を増やす

不安や憂鬱になっているときこそ、「1日の運動時間はどれくらいだろう」と考えてみてください。もしくは、運動以外の趣味や習い事など夢中になれることに費やしている時間でも構いません。

現実の生活の忙しさから離れて、運動や趣味、習い事等に夢中になることはメンタルヘルスに有効です。

【乗り越え方⑤】 睡眠時間を十分にとりましょう

「寝る時間、起床時間は決まっていますか?」「体内時計は乱れていませんか?」睡眠時間の確保や質の高い睡眠は、乗り越えるために重要な要素です。質の高い睡眠を得るためには、規則正しい生活リズム、朝の日光を浴びる、運動を続けるなどの取り組みが大事です。

【乗り越え方⑥】 休息、リラクゼーション時間の確保

心身ともに休息できる時間を確保することやリラクゼーションに取り組むことは大切です。

ストレッチや肩回しなどで心身の緊張をほぐす行動にはリラックス効果があります。また、マインドフルネスでの瞑想なども、学校やオフィスでも取り組む機関が増えています。短時間でも構いませんので、生活の中へ積極的に取り組んでいきましょう。

【乗り越え方⑦】 環境を整理整頓をしてみる

環境の整理整頓は、時間・情報・気持ちの整理の基本です。やる気の起きないときは、掃除や片付け等など、身の回りの整理整頓をしてみましょう。何から始めたらいいのか分からない人は、まずは下記を意識して行ってみてください。

  • 玄関を含む部屋の片付け
  • 机の上や引き出し、本棚の整理
  • パソコン、スマホのデータの整理
  • 住所録・顧客リスト・名簿などの整理

【乗り越え方⑧】 カウンセリングを受ける

専門的な知識をもつ専門家からのカウンセリングを受けることは、自身の人生を振り返ったり、家族や社会の人間関係を見直したり、ライフスタイルに向き合う機会になります。

一度のカウンセリングだけでミッドライフクライシスから抜け出すことは難しいかもしれませんが、回数を重ねることで、問題を整理したり、多様な考え方に気付いたりすることができていくことでしょう。

気持ちが楽になり、今後の人生の新しい目標の設定などができるほどの効果がカウンセリングには期待できます。

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ミッドライフクライシスをチャンスに変える

ミッドライフクライシスは、誰にでも起こりうる可能性のある状況です。また、人生の転機だけではなく、順調な日常の生活の中で突然に襲ってくる場合もあるかも知れません。

意欲の低下や心身の変調を自覚することで、「自分はどこかおかしいのかも?」「うつなのかも?」と不安や戸惑いを覚えることは当然の反応だと思います。

そんなときは、少し肩の力を抜いてリラックスしてみましょう。趣味や習い事を始めてみるなど、日常とは違った時間を過ごすのも良いかも知れません。

「今より悪くなるかもしれない」と危機や不安を避けようとするより、リラックスをしてライフスタイルの見直しや、自己観察の絶好の機会にしてください。危機と捉えているミッドライフクライシスは、ピンチをチャンスに変えるきっかけになるもしれませんよ。

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吉田純一

公認心理士。36年間の中学校教員を経て、現在は教育現場で児童生徒、保護者、教職員のカウンセリングを行っている。今まで受けた相談件数は500件以上。共著に『環境授業に使える面白クイズ』(明治図書)『新しい問題解決学習の授業展開』(ぎょうせい)などがある。

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