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2020.05.07

マイナス思考の原因は過去の不安。精神科医おすすめの4ステップで改善・克服しよう

「考えすぎ…」と分かっていながらもモヤモヤしてしまうママ友付き合い。もっと気楽に付き合えるようにマイナス思考に陥りがちな自分を変えていきたいと思うことはありませんか? そこで、児童精神科医の“まえまえ先生”こと前田佳宏医師がマイナス思考や心配性について解説します。心理の専門家が伝授する不安との上手な付き合い方とは?

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【今回のお悩み】

もともとマイナス思考で心配性。子どもが学校で友達に嫌な思いをさせられたという話を聞いたり見たりすると、子ども以上に落ち込んで必要以上に心配をしてしまいます。また、相手は忙しかっただけかもしれないのに、ママ友のあいさつが素っ気なかっただけで「何かしてしまったかも?」と不安になってしまいます。不安そうな親に育てられた子どもに悪影響はあるの? 感情のコントロールができるようになりたいです。(小学3年生・女子の母/42歳)

 

マイナス思考や心配性は短所じゃない

まず伝えておきたいのは、心配症やマイナス思考はダメなことではないということです。マイナス思考や心配性だから、自分がダメな人間だとは思わなくてもいいですよ。

マイナス思考や心配性になってしまうのは、不安を感じているからですが、人は不安を感じることで準備を万全に行うことができたり、入念に調べものをしたりすることができます。心配性やマイナス思考が結果的に失敗を減らすことに役立っているのです。マイナス思考や心配性だからこそ達成できたこと、実現できたこともこれまでの人生であるはずですよ。

しかし、不安になり過ぎて眠れなくなったり、食欲がなくなったり、やる気や集中力が著しく欠けたりなど、日常生活に支障が出てきてしまうなら対処をしなくてはいけません。つまり、マイナス思考や心配性は、どう向き合って、付き合っていくかが大切なのです。

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マイナス思考の原因は過去に感じた不安

そもそも、なぜ相談者さんにように不安が強く出てしまう人がいるのでしょうか。その原因を一概にいうことはできませんが、過去に感じた危機的状況による不安が一因となっている場合があります。

例えば、子どもの頃、突然親が帰って来ず、長時間ひとりで留守番をしていたとします。親を待っている間、子どもは不安ですよね。その後、親が帰ってきたとしても、家を空けた理由などを子ども説明せず、そのとき感じた不安をケアしないままだとしたらどうでしょう。

親が帰ってきたことで、そのときは安心できるかもしれませんが、そのときに感じた“人は突然いなくなるかもしれない”という不安は心の中に残ります

その“人が突然いなくなるかもしれない不安”は、親以外の友人や恋人に対しても発動されます。誰に対しても「いつかいなくなってしまうのではないかという不安を感じ、あらゆる対人関係に不安を感じやすい性格になることがあります。

また、不安になりやすい性格になるきっかけは、親が重い病気を患ったことで感じる不安(不可抗力による不安)や学校でのいじめ被害など、家庭以外で起きたことも考えられます。本人に自覚や印象のない出来事も不安のなりやすさにつながってる可能性があります

マイナス思考とうまく付き合い克服していく方法

先ほどお伝えしたように、不安になりやすい性格は心で抱えたままの不安が原因になっていることがあります。

しかし、もし、きっかけとなる出来事が起きたとき(突然一人ぼっちになったとき)に、不安になる必要はなかった(例えば、親が出かけていた理由を話し、あなたを捨てることはないよと伝える等)ということが理解できれば(不安をケアしていれば)結果は違うかもしれません。

“人は突然いなくなるかもしれないと不安を感じても、その不安は解消される(できる)”という経験が蓄積されていれば、またひとりぼっちを感じて不安になっても、「この不安はいつか解消される(できる)だろう」と自分自身で不安をやわらげることができるのです。

つまり、不安なことが起きても、“解消される(できる)”ということをその都度体験していけば、日常生活に支障を出すほど大きな不安になる前に自分の中で収めていけるようになっていくのです。

そこで、感じた不安を“解消される(できる)”という経験に変えるために試してほしい4つのステップを紹介します。

マイナス思考を克服していくための4ステップ

①不安になりそうなことが起きる
例)ママ友に挨拶をしたけど素っ気なかった

②何が不安なのかを吐き出す
不安に感じていることを安心して話せる人に全て話しましょう。もし、話す相手がいなければノートに書き出すことでも構いません。
例)「ママ友に嫌われてしまったのではないか」「嫌われたことで子どもの人間関係に支障ができるのではないか」「次の保護者会は誰と話したらいいの?」等

③仮説を立てる
不安を吐き出したら、どうして①が起きたのか話し(書き)ながら仮説を立てましょう。
例)仮説1:忙しかったから 仮説2:私の言動が気に入らない 

④仮説が事実である確率を考え、実証してみる
これまでの関係や出来事、経験を踏まえて③で立てた仮説のどれが事実に近いのか確立を考えてみます。もし分からなければ、行動してどれが正しいのか実証してみましょう。
例)どの仮説が正しいか分からないので、勇気を出してもう一度ママ友に挨拶してみる。普通に挨拶を返してくれれば仮説1が正しい可能性が高くなり、不安は解消されます。

“何に対して不安なのか”が分からないと人の不安は膨れ上がっていきます。まずは、②で不安の正体を明らかにし、③④の仮説&実証で不安を収める考え方を体験を通じて覚えていきます。

①~④で挙げた”例”で考えてみると、再びママ友のそっけない態度に不安になることがあっても、「忙しいからかな」と自分で不安を収めることができるようになっていきます。もし、1度の経験じゃそう思えない人も、繰り返すうちに納得できるようになっていくはずですよ。

この不安を収めるパターンが増えていくほど不安とうまく付き合えるようになっていきます。

克服のヒント:安心できる人や感情吐き出しノートを作る

上記の4ステップを行う上で欠かせないのが、安心して話せる相手(対象)がいる(ある)かどうかです。家族や友人など相談ができる人が身近にいればいいですが、もしいなければ心理職などの専門家に相談してもいいですね。

人に話すのが苦手なら、ノートに書いてもいいですよ。私が治療の一環で勧めているのは「感情吐き出しノート」です。感情のおもむくままに不安な気持ちを書きましょう。頭の中だけで考えていても思考は堂々巡りになりがちです。話すことでも書くことでも感情を吐き出す行為は、感情や思考を客観視できるので冷静になっていきますよ。

子どもをマイナス思考、心配性にさせない方法

また、相談者さんは子どもの話を聞いていると子ども以上に心配してしまうということですが、子どもが不安そうな様子を見せたら、まずは話を聞くようにしましょう。前述の「マイナス思考を克服していくための4ステップ」の②に出てきた“安心して話せる人”に親がなるのです。

どんな話を聞いてあげればよいのかは、「マイナス思考を克服していくための4ステップ」を聞き手側の視点で考えてみてください。

子どもの不安と向き合う4ステップ

  1. どんな出来事があったのかを聞く
  2. どんなことが不安なのかを聞く
  3. ①の出来事が起きた理由に仮説を立ててみる
  4. ③の仮説が事実である確率を考えて、今後、どんな風に行動すればいいか一緒に考える

話が分かりづらいところもあるでしょうが、子どもの話しながら一生懸命に整理整頓をしているのです。問い詰めるようなことはせず、話したいことをすべて話させてあげましょう。

子どもの不安を聞き出すコツ

ただ、子どもは、年齢が幼いほど、考えや感情を整理すること、話すことがまだ未熟です。聞き役として話をサポートする必要があるかもしれません。

そのときは「それは~っていうことでしょう!」と決めつけるのではなく「それは~ってことかな?」というように提案したり、「それは、Aってことかな? それともBということかな?」と選択肢を与えたりしてもいいですね。

ひとりで抱えきれないなら相談役を増やす

子どもの話を聞いて抱いた不安を、ひとりで抱え込む必要はありません。例えば、お父さんや学校の教員、スクールカウンセラー、子ども家庭支援センターなどに相談するようにしましょう。ただし、相談する場合は子どもに話してもいいか相談してみたほうがいい場合もあります。

大人が子どもの不安に付き添ってあげながら一緒に考えていくことは、子どもが不安への向き合い方を学ぶレッスンになり、不安とうまく付き合っていける大人に近づいていきます。ご自身のできる範囲でいいので、少しずつ試してみてくださいね。

マイナス思考を一時的に減らす2つの改善策

とはいえ、マイナス思考や心配する気持ちが強い人は、なかなか冷静に子どもの不安と向き合えないかもしれません。

しかし、子どもは不安との向き合い方のお手本としてあなたを見ています。子どもの前だけでもあなた(親)自身が不安に動じないようにしましょう。そこで、不安を一時的に減らす方法を教えましょう。

改善策1:脳の誤作動だと受け流す

精神医学には、物事の見方や受け取り方(認知)に働きかけて感情を軽くしていくという「認知行動療法」という療法があります。その方法のひとつに、不安になってきたら「この不安は脳の誤作動。本当は不安になる必要がないんだ」と反射的に考えて受け流し、落ち込みや不安を一時的に減らす方法があります。

改善策2:鎖骨の下を指でグリグリする

アメリカ発祥の心理療法に「TFT」(別名:つぼトントン)というものがあります。鍼などをさすツボを指でタッピングすることで心理的問題の症状を改善していくストレスケア法なのですが、その一部を引用してアレンジした方法を紹介します。

図にあるように、左胸の上のほうに骨と骨のあいだにある、へこんだ部分に「圧痛領域」があります。不安を感じたら圧痛領域を指でしばらくグリグリ押してみましょう。少し落ち着いて、リラックスできるかもしれません。

ただし、これらの方法はその場しのぎの方法。あなたが背負った不安が解消されたわけではありません。不安は見えないところであなたの中に蓄積され、いつか溢れてしまう可能性もあります。子どもがいないところで、「不安を収めるための4ステップ」を行い、不安と向き合う時間もとるようにしていけるといいですね。

マイナス思考や心配性な性格=「ダメなところ」ではありません。ただし、日常生活に支障が出てきてしまうほどになるのはつらいですよね。この記事を通して、不安を収める経験を積みながら、不安とうまく付き合う方法を身に付けていってもらえたらいいなと思います。そして、一人で抱え込むのが辛かったら安心して話をできる人や専門家に相談してみてくださいね。

この記事を書いた前田佳宏さんに相談してみませんか?

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<文・構成>ソクラテスのたまご編集部

前田佳宏

ADHD、HSP、ASDに関連した愛着障害とトラウマをケアする、子どもと大人の精神科医。東大医局所属で現在は和クリニック院長。自身も心理療法の研修を受け、認知行動療法、家族療法、マインドフルネス、精神分析、トラウマケアを統合したケアを提供する。愛着トラウマの回復と支援を目指すケアコミュニティ「しなやかこころラボ」を2022年10月に公開予定。メンタルヘルスや哲学カフェを時々開催しています。Twitter:https://twitter.com/mayoshinako LINE@:https://lin.ee/dY8flX

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