2020.03.26

宿題、定期テストを廃止!麹町中学校の取り組み、成果を脳科学で分析/千代田区立麹町中学校研究発表会レポート②

前代未聞の学校改革を行い注目を集める千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長。この2年間、「脳科学」を活用した教育環境や子どもたちへの指導法について研究を進めてきました。そので成果を報告する研究発表会の内容を全3回でレポート。第2回目となる今回は、工藤校長と教員による実際の取り組み事例を紹介します。

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教員も生徒も「心理的安全状態」が保たれるように

前回の記事(下記)では、脳科学的視点(「心理的安全性」と「メタ認知」)を踏まえた教育現場の問題点などを紹介しました。

 

前回の記事はこちら

学校教育の当たり前を変えた!麹町中・工藤校長の教育改革とねらい/千代田区立麹町中学校研究発表会レポート①

 

今回の記事では、下記のような麹町中の改革により教育現場がどのように変化したか教員からの事例発表を紹介します。

 

これまでの日本の教育の問題点をふまえ、“自律した生徒の育成”を目標に麹町中学校では、下記のような教育改革を行ってきました。

 

麹町中が取り組んできた改革

・固定担任制から全員担任制へ
・宿題の廃止
・定期テストから単元ごとのテスト・再テスト制へ
・服装・頭髪指導の廃止
・アクティブラーニングなどを重視した学び方支援
・自治活動の促進 など

 

では、中でも、”固定担任制から全員担任制へ”という具体的な改革を例に挙げて、脳科学的にどのように変化したのかを紹介していきましょう。

 

全員担任制に対する声と脳科学的変化

<教員からの声>
「生徒を複数の教員で見守ることができるようになり、教員同士の連携が促された」
「トラブルが起こった時、その生徒が信頼する教員が対応することで、生徒と教員が対立することが劇的に減った」など


<生徒からの声>
「相談する先生、面談する先生を選べるので、安心していろいろ話せる」
「いろんな先生とふれあえて、楽しい」
「クラス独自のルールをおしつけられなくなり、居心地が良くなった」など

 

合わない担任との関係に苦しんだり、先生の「あたり」「はずれ」といった意識が生まれやすい固定担任制のデメリットを払拭。教員、生徒ともに「心理的安全状態」(※1)が確保でき、より良い教育環境へと変わったそうです。

 

※1:一人ひとりが恐怖や不安を感じることなく、安心して発言や行動ができる状態のこと。

 

麹町中学・工藤勇一校長の著書はこちら

 

 

 

生徒たちが最上位目標を決め、教師はサポーター

麹町中では、生徒たちが活動を行う際には、下記の姿勢で取り組めるよう、教員が見守り、サポートしていくそうです。

 

<生徒たちの活動をサポート>
・皆で合意できる「最上位目標」=最も大切な目標を決め、共有する。
・そこに向かう「手段」や「方法」はいろいろあることを認め合う。
・その「手段」が「目的」とならないよう、「最上位目標」を常に確認しあう。

一例として示されたのは、「給食当番」についてです。

 

給食の配膳は、それまで班ごとに順番で回ってくる「給食当番」が行っていましたが、やりたくない生徒が多く、イヤイヤ行っているため給食の準備に時間がかかっていたそうです。

 

そこで、生徒からの提案で、最上位目標を「給食を早く準備する」と設定しました。


給食を早く準備するためにはどうしたらいいのか。生徒は、教員の支援を受けながら

“クラスの垣根を越えて給食当番の有志を募る”

”男女にかかわらず何人でも可”

などのルールを決め、”給食当番の有志化”を実現したそうです。

 


さらに、「白衣を洗う人は?」「給食当番はおかわりする時間がないけどどうする?」など、問題が出るたび、教員の支援を受けながら生徒たち自身で解決策を考えていき、結果的に最上位目標である給食準備時間の短縮化が実現。昼休みにたくさん遊べるようになったそうです。

 

教員が“教師”としてでなく、“サポーター”として生徒を見守り、支援に徹した麹町中。この環境が生徒が自分の気持ちや考えと向き合うこと、メタ認知能力(※2)を高めることになりました。生徒たち自身が成長をしながら、みんなが納得する体制を作ることができたのです。

 

※2:自分を客観的に知る力

 

 

 

「今、君はどんな状態なの?」「君はどうしたいの?」

麹町中の教員は、生徒の”自律”を育てていくために、生徒が問題を抱えているように見受けられる場合でも、まずは生徒たち自身に考えさせます。そして、サポーターとして、次のような言葉がけを意識しながら関わるようにしたそうです。

 

麹町中の言葉がけ例

「今、君はどんな状態なの?」
「君はどうしたいの?」
「先生は、何を支援すればいいの?」

 

このような言葉がけを繰り返すことで、生徒は自分を客観的に見つめることができるようになる=メタ認知能力が高まります


自分自身の思考や心理状態を自分で捉えることができるようになるため、「今、自分は〇〇〇だから、△△△で考えてみよう」などと“自己決定ができる=自律ができる”ようになっていくそうです。

 

工藤校長のもと、教育改革と向き合い、現場で日々生徒と向き合う教員の方々の言葉はパワーと臨場感にあふれ、時間がたつのも忘れて聞き入ってしまいました。

 

連載第3回では、麹町中研究発表会から学ぶ、親としての子どもの関わり方について紹介します。

 

長島 ともこ

長島 ともこ

2人の子供を持つフリーエディター、ライター。500件を超える取材経験があり、育児、妊娠&出産の分野を中心に書籍、雑誌、WEBの編集、企画、ライティング業務などに携わっている。小学校でPTA執行部・広報委員長をつとめたことをきっかけに「PTA広報誌づくりがウソのように楽しくラクになる本」(厚有出版)などの著書も出版し、全国で講演活動も行っている。

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