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2020.03.16
2020.09.25

麹町中学校 工藤校長が熱弁!日本の学校教育のここがヤバい|研究発表会レポート①

宿題、定期テスト、固定担任制の廃止など、これまでの教育の当たり前を覆して前代未聞の学校改革を行う千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長。教育界のみならず、民間企業や団体と連携し、型破りな取り組みを進める彼は、この2年間、脳科学を活用した教育環境や指導法について研究を進めてきました。その成果を報告する研究発表会が2020年2月26日、霞が関・文部科学省で開催。その様子を、3回にわたってレポートします。第1回は、“工藤校長の教育改革、そのねらい”についてです。

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「教育を変えたい」文科省の本気を感じた発表会

本会のテーマは、「脳科学を活用した教育環境および指導方法の研究〜学校教育を本質から問い直す〜」。

発表の内容は、学校における働き方改革の本質にもつながることから、文部科学省初等中等教育局財務課が行政関係者等を対象に行う「学校の働き方改革に関する報告会」と合同で開催されました。

冒頭の挨拶で、文部科学省初等中等教育局財務課長・合田哲雄さんは「今の日本の教育のままでは、子どもたちは本当の意味で自立できない。このことに危機感を抱いています。今こそ、工藤先生が進めているような学校教育の進化を、保護者、教師、教育委員会、文部科学省で共有し、みんなで意識改革を進めていくべきだと考えています」と語り、言葉のはしばしから「この国の教育を変えたい」という“本気度”が伝わってきました。日本の教育の未来に、一筋の希望を抱くことができた瞬間でした。

そして、千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長の登場です。

「社会構造の変化や急激なデジタル化などにより、ひとつの会社に定年まで勤めるなどありえない今の時代。麹町中では、自ら考え、他者との違いを尊重し、豊かな発想をもつ生徒を育てるべく、宿題や校則の廃止、固定担任制から全員担任制へ、個の学び、協働の学びなど、さまざまな改革を行ってきました」と話します。

その理由や背景について、2つの課題が示されました。

工藤校長の著書はこちら

日本の学校教育の課題1「手段の目的化」

教育の本来の目的は『自立した生徒を育成すること』。その手段は『徳育・知育・体育を通して基礎学力を身につけさせること』です。しかし、日本の教育現場は『手段』が『目的化』してしまっているのです」と、工藤先生は言います。

下記はそもそも“手段”にすぎない事柄です。

  • 勉強時間を増やすこと
  • 校則を厳しくしたり、服装や頭髪指導を徹底すること
  • 生徒全員に一律の宿題を与え、提出すること など…。

しかし、これらがいつの間にか、教育の“目的”にすりかえられてしまっているのではないか、というのです。

“勉強時間を増やすこと”が目的になってしまっているから、子どもたちに「1日〇時間は勉強しなさい」などと強要したり、“服装や頭髪指導を徹底すること”が目的になってしまっているから、守れない子どもを必要以上に叱りつけ、萎縮させてしまう…。

教育の本来の「目的」を見失った活動を黙々とさせられる子どもたちは、課題発見能力や問題解決能力を失ってしまうのではないか、と、工藤先生は危惧しています。

熱意をもって語る工藤校長

日本の学校教育の課題2「当事者意識の欠如」

もうひとつの課題が「当事者意識の欠如」についてです。

「今の子どもたちは、(親を含む)大人が先回りをして『こうすればできる』『この方法なら失敗しない』と指示したりなど、手をかけすぎているように感じます。これにより、子どもは自ら考え、判断し、行動することができなくなります。その結果、自分がうまくいかないことを誰かのせいにするようになってしまいます。自分や社会を取り巻くさまざまな問題を“自分ごと”して捉えることができず、当事者意識が欠如したまま大人になってしまう危うさをはらんでいるのです」(工藤校長)。

以上のように日本における学校教育の課題をひもとき、麹町中の改善目標として掲げられたのが、以下の2つです。

麹町中の改善目標

●“手段の目的化”が当たり前となってしまっている教育環境を変える

●子どもたちが“当事者意識”をもって社会問題を解決していこうとする姿勢を育む

麹町中の教育改革のねらいが伝わりましたか? このような麹町中の取り組みを理論的に検証してく上で、取り上げられたのが「脳科学」です。

麹町中の取り組みを教育×脳科学でアプローチ

ここで、脳、教育、ITをかけ合わせた「Neuro Ed Tech」分野の第一人者である脳科学者の青砥瑞人(あおとみずと)さん(「Dancing Einstein」代表)が登場。

脳科学や神経科学が教育に対してどのようなアプローチができるのかということに興味があった青砥さんは、自ら工藤校長のもとを訪れ、麹町中の取り組みを研究することになったそうです。

青砥氏は、以下2つのテーマから、麹町中の取り組みを検証しました。

テーマ①「心理的安全性」

心理的安全性とは、一人ひとりが恐怖や不安を感じることなく、安心して発言や行動ができることを指します。逆に、心理的危険性とは、不安を抱き、主体的な発言や行動ができないことを指します。

脳科学の世界では、近年の研究により、心理的安全性の状態と心理的危険性の状態では、脳の機能に大きな違いがみられるそうです。

心理的危険性の状態にあると、思考や創造性を担い、感情をコントロールする働きのある『前頭前野(脳内の最高中枢)』の機能が低下し、思考が停止してしまったり、感情のコントロールが効かなくなることが分かっています」と、青砥さん。

これを学校生活にあてはめて考えてみると、“校則や宿題などに過度に縛られ、学校で不安を感じることが多い子ども(心理的危険性の状態の子)に対し、先生がどんなに大声で怒鳴っても、子どもの頭には入らないし、残らない”ということになります。

脳科学の視点で学校づくりを考えると、「学校に通う子どもたちが、心理的安全を感じるような環境づくりが大切です」と、青砥さんは語っていました。

脳科学者の青砥瑞人(あおとみずと)さん

テーマ②「メタ認知」

メタ認知とは、自分を客観的にとらえ、自分について学習させること。ひらたくいうと、自分を客観的に知ることです。

「人間は、自分についてあまり知らないし、知る機会もありません。しかし、“自分を客観的に捉え、それらを脳に記憶させることで、モチベーション(やる気・意欲)が上がる”ということが脳神経科学の分野で明らかになってきています」(青砥氏)。

つまり、子どもたちのメタ認知能力を高めることは、学ぶ意欲の向上につながるのです。

工藤校長と青砥さんから発せられた一つひとつの言葉は非常に説得力があり、教育改革への強い熱意が感じ取られたところで、前半が終了。

連載第2回では、麹町中の教育改革の具体的な内容と、それらにより、子どもたち、先生、保護者がどのように変化したのか、その事例を紹介します。

長島 ともこ

長島 ともこ

2人の子供を持つフリーエディター、ライター。500件を超える取材経験があり、育児、妊娠&出産の分野を中心に書籍、雑誌、WEBの編集、企画、ライティング業務などに携わっている。小学校でPTA執行部・広報委員長をつとめたことをきっかけに「PTA広報誌づくりがウソのように楽しくラクになる本」(厚有出版)などの著書も出版し、全国で講演活動も行っている。

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